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過去作雑感

少女が創った最初の歴史


 図書屋にとって初めての東方二次創作作品であり、初の東方創想話投稿作品。上白沢慧音を主人公とした過去捏造モノと言われるジャンル。これを書いた時、私はまだ17歳だった。信じ難い。
 自分の作品を振り返るにあたって何度か思い出そうと試みているのだけれど、どうして慧音を主役にしたのか未だに思い出せない。もちろん嫌いなわけではないのだけれど、特別思い入れのあるキャラクターでもないのだ。書きたいネタというかギミックが先にあって、つまり史実と絡めた過去捏造をやりたいがために慧音を配置したというのが実際本当のところだろうと思う。
 このころから今に至るまで、だいたいが提示したい設定がまずあって、それに従って配役や筋立てを決めていくという書き方は殆ど変っていない。結局私はキャラクターとかストーリーを見せたいのではなく、自分の考えた設定を語って聞かせたいのだろう。設定だけ聞いてくれる人はいないから小説にするのである。

 

 


先代博麗と宵闇の女王


 2作品目にして黒歴史。
 練り込みの足りない設定に稚拙な展開、読み返すのが辛くて内容をあまり覚えていない。やりたいことをやり切った感だけはある。これも過去捏造モノの範疇なのだろうか。
 まずオリジナルのしかも男性主人公というのが新人が手を出して良い設定ではない。ただ、私は自然な日常描写の中にむしろ不自然に男性が登場しないことの違和感を常に覚えているし、そういう暗黙の了解に従いたくなく、実際従っていない。それはおいといて。何と言うか痛々しさがあるのだけれど、すごく気に入ってくれた人もいたようで、消すに消せないのだ。

 

 

 


夜のおとずれ


 3作目。現時点での最低得点作品。宵闇~に比べればまだましな作品だと自分では思っているのだけれど、内容が誰得すぎたのだと思う。
 夜伽でやれという感じもするけれど、それにしてはそういった要素が足りなくもあり、結局全体的に足りないという感じの作品なのだろうか。個人的には大好きなキャラクターである輝夜を登場させたところで若干満足してしまっているのではないかという疑いもある。
 輝夜と妹紅の絡みを、考えてみればそれほど気に入っているわけでもないので、やっぱり何で書いたのか分からない。きっと少しダークでインモラルな作品を書きたいお年頃だったのだと思う。

 

 

 


レミリアさんマジガキ大将


 記念すべき創想話復帰作にして現状最高得点作品。点数にして前作夜のおとずれの十倍以上。2年ぶりに創想話に投稿した作品である。大学生になって暇になったからだろうと思う。その割に次までまた間が空くのだけれど。
 文を主役にしたレミリアメインのお話。順当に人気キャラを出したところが評価の決め手ではないかと思っている。これ以降の紅魔館を舞台とした作品「オメラスの原罪」「デザートにラングドシャ」は全部この時に生まれた設定をもとに作られている。作品にしていない長大な紅魔館の過去編が常に頭にあって、そこを出発点に書かれているのだ。読者はそんなもん知ったこっちゃないのだろうけど。
 紅魔館のメイド妖精に特別愛着を抱いてしまったのがこの作品のせいで、以後テキトーな名前のメイド妖精が私の作品のあちこちに出てくるようになってしまった。このメイド妖精を主役に据えた作品の構想もあるのだけれど、世に出せるまでどれくらいかかるだろう。
 紅魔館の収入源ってなんだろうという疑問への解答が一番念頭にあったのではないかと思っているけれど、内容的にはレミリアと妖精メイドの関わり方のお話。たぶん今書いたら3倍は長くなる。

 

 

 

 


幻想郷のほとんどは私たちのよく知る彼女たち無しに今日も平和に回っている


 タイトルが長い。
 私の創作の動機の大きな部分を占める、東方界隈においておよそ当然のように定着している2次設定に対して思いっきりカウンターパンチを叩き込みたい、という私のモチベが分かりやすく顕著に表れた作品。
 コメント返しの懺悔にあるとおり、本来はもっと長い話にする予定で、この作品はそのためのプロットだったのだけれど、割と上手いこと纏まったのと、改めて書くのがだるかったのもあって、そのまま作品という体で投稿したものだ。案の定聡い人には単なるあらすじでしかないことを指摘されてしまったのだけれど、割と反響もあって面白い作品にもなった。
 この作品で実は一番言いたかったことは、「幻想郷には公式で名前付きで描写されたキャラ以外にもたくさんの人間や妖怪が住んでいて、それらを一切出さずに日常の描写を完結させるのは不自然であるから、今後もオリキャラバンバン出すけどガタガタ言うな」ということだ。ちょっと歯が全裸すぎたかもしれないが。衣着せろ。それはいいとして、名前ありのキャラが出てないがために人里の代表者みたいにして慧音が描かれたり、魔法の森には魔理沙とアリスしか住んでないみたいに描写されることにどうしても違和感を覚えてしまう性質なので、そこで無理に既存キャラの設定を拡大するくらいなら無難にオリジナルキャラを出したいのである。

 

 

 


無名の丘に沈む月


 特別な作品。
 構想から実際に完成させるまで非常に時間がかかった作品で、しかも内容が万人受けするとはとても言えないシリアスだったので、前作「幻想郷の~」が評価されている今しか、これを出す機会は無いと思って徹夜で書き上げた。
 徹夜だ。
 結構長いこと、私は作品執筆の途中に寝ると勢いがリセットされてそのままお蔵入りになってしまうという創作上の欠陥を抱えていたので、そこそこ分量のある作品は徹夜で書いていた。今はそんなことは無い。
 このあたりから「設定で読ませる」ということを意識し始めた。無論、意識し始めただけで出来ているかどうかは別のお話。この話で書きたかったのは、オカルトめいた迷信には、実は社会システム的な必然性だとか、科学的な根拠が隠されている場合があるということで、言ってて良く分からなくなってきた。妥協するのかあくまで厳密であるべきか、というテーマであって、例えば治安の良くない地区のハイスクールで、エイズの蔓延に対して保健室でコンドームを配るのか、原理原則に従ってあくまで高校生のセックスを認めないのかというようなことである。前者の方が当面は現実的な対応で、効果を発揮するんだけど、後者を貫いてこそ至る解決もあって、・・・いい加減何の話だ。
 この作品は明らかに前者であって、社会階層上やむなく存在するアンタッチャブル(不可触)な存在を社会システムに組み込んでしまった社会として人里を描いている。なんかいい話風に爽やかに終わってるけども、今後も”カラス”という存在は存続し続けることになるわけで、何も解決されてはいないのだ。解決が必要かどうかはまた別のお話。
 代表作を聞かれたらこれを言うことにしている。そもそも代表作って自己申告するものではない気がするが。

 

 


オリエンタルダークフライト/夜の東側


 サカナクションを聞きながら書いたんだけど、見りゃわかる。
 魔理沙というキャラにそれほど思い入れは無いのだけれど、どうして彼女を描いたのか。サカナクションの夜の東側を聞いている時にオリエンタルダークフライトと名前似てるな、と思っていつの間にかこんなんなっていた。
 あと、この時期は地元での就職が決まっていて、まさに帰る直前の時期に横浜で書いた作品で、そう考えるとここまで露骨に自己投影した話もない。夢を追うべきなのか、現実をみるべきなのか。

 

 

 

 


もういちどマスタースパーク


 もういちど○○というタイトルは前から使いたいと思っていた。
 この作品は前作へのセルフアンサーであり、時期的に仕事を初めてしばらくたったころに書いたものである。魔理沙が結婚していて子持ち、という設定を考えた時に果たしてこれで良いのかとちょっと悩んだのだけれど、そういう作品もどんどん書いていきたいと思ったのだ。東方二次創作においてヘテロ的恋愛はその対象が読者感情移入型主人公の場合を除くと忌避されてきた歴史があって、それって凄く分かるのだけど、一方で非常にいびつであるという認識を持っている。
 そんなこと言って私も女性キャラ同士の恋愛作品をいくつか書いているわけで、無論それに異を唱えているわけではないのだけれど、女性キャラが結婚して幸せになってもいいと思うの。加齢や異性との恋愛経験によって少女性が失われていくということは、そのまま東方的でなくなっていくということでもあるだろうし、それほど求められてもいないのだろうけど、逆に東方的でないことだからこそ二次創作でやるべきではないか。
 この作品に登場する輝夜は私にとって理想の生き方をする体現者であり、彼女の語る運命論は私の人生哲学そのものである。未来は未確定ではなく、可能性は無限大ではない。しかし確定しているとはいえ未来を観測する手段がない以上、我々は最善と思われる道を選び取っていく(あくまで主観的な話で、実際に選択肢があるわけではない。あるように見えるだけだ)しかないのだ。

 

 

 

 


オメラスの原罪


 やっぱりおぬしレミリアが好きじゃな。
 レミリアが好きというより創作する上で動かしやすいというだけで、つまり彼女は便利な女なのである。酷い言い草だ。草。
 タイトルの元ネタは露骨に寓話的であんまり好きではない。
 里の人間は襲わないが外来人はその限りではない、というのはつまりどういうことなのかというのを軽く突き詰めていった作品。人間は妖怪の都合で生かされているだけなので、人間にはしたたかにその辺を利用するたくましさを持っていて欲しい。
 私は大のために小を切り捨てる判断をすべき時があると思っているし、割と右寄りな思想の持ち主のようでもある。そのくせ切られる小のために色々と画策する仕事をしているのだから因果なものだ。私は人間は幸せを目指すべきだと思っていて、その幸せは人それぞれなんだけど、その過程で必要に応じて他人は見捨てるべきだと思っている。積極的に不幸を押しつける意味は無いけれど、自らの幸福を手放してまで他人を救う義務はないだろう。もちろん、他人を救うことを自らの幸福としてカウントする場合は除く。

 

 

 

 

黄金音虫の挨拶とティーポットの中の混沌と

 

 急に恋愛ものを書いたけれど、書きたいとはずっと前から思っていた。ずっとずっと。

 どうしてこんなストーリーを考え付いたのか、今となっては皆目見当もつかない。これが一つ、創作をするうえでの醍醐味というか、私たちは今自分が書いている作品のつまらなさにいつも辟易とする一方で、かつて書いた自分の文章を読み返しては、その意外な面白さに満足気になるのだ。そんな作品の一つになった。

 東方二次創作のジャンルとしては恐らく大きな面積を占めるキャラクター同士の恋愛もの、それを何時か書きたいと思っていたのは、先行する様々な名作良作に触れてきたからであり、同時に、それらに不足を感じても来たからだ。もっといろんな組み合わせ、もっと様々なシチュエーションがあっていい。特に私は天邪鬼であるから、ひねくれた組み合わせばかり考えたくなる。本当を言うと、王道で勝負するには自力が足りない自覚があるから、ニッチを開拓することで生き残りを図っているだけなのかもしれないけれど。

 ゆかれいむ、レミ咲、けねもこ、エトセトラ。様式美にはその良さがあるけれど、そもそも絶対数の多い東方二次創作においてそれらがどれだけ描かれてきたか。うんざり、とまで言うといささか以上に刺々しいけれど、まさしくそのような感じだ。この広い東方界隈の中でも、ナズ正や八あきゅなんて組み合わせを扱っているのは私だけだろう。こんなこと言って違ったら赤っ恥では済まされないけれど、興味があるのでもし知っている人は図書屋までご一報を。

 いい加減作品の雑感も話そう。

 まず私は正邪が大好き。そんで彼女のことを考えていたら、逃亡場所として無縁塚が浮かび上がってきて、自然にナズーリンのことを思い出した。彼女の一人暮らし設定をきちんと料理している作品が少ないことは寂しく思う。

 タイトルにある「黄金音虫の挨拶」とはそのままビートルズのHello goodbyeのことだ。だれでも聞いたことがあるだろうけど、歌詞がまんま正邪のイメージに重なる。どうしてハローと言っているのにグッバイなんて悲しいことを言うのだろう。なんで、と聞いてみるのだけれど、彼女にだって分からないのだ。

 上海アリス幻楽団の中でアリスが特別な位置にあるように(あるよね?)私のサークル「黄金音虫」の名を冠したこの作品もきっと特別な位置にある。

 

 

 

 

デザートにラングドシャ

 

 急に思いついた奴。

 全然違う話を書くつもりで、ツイッターに予告までしていたのに、急な思いつきで書き上げた作品。ちなみに本来書こうと思っていたのは、東方projectが様々な媒体でメディアミックス的に展開される作品群として扱われている近未来において、それぞれの東方キャラクタを演じる少女たちを描くというこれもう二次創作なのか何なのか分かんねえな的メタ作品であった。新シリーズにおいて重要な役どころである鬼人正邪役に抜擢された桂崎という少女を主役に据えて、子役時代から活躍してる年下でベテランのチルノ役の少女から説教されたり、家族と軋轢があったり、嫌われ役のイメージがつくかもしれないと危惧するマネージャーとひと悶着あったりと、結構細かい筋立てまで決まっていたのだけれど、お蔵入りになってしまった。

 それはセブンイレブンで買ってきて机の上に放置していたラングドシャのせいである。

 ラングドシャ→猫の舌→そういえば咲夜さんには猫舌という設定があったな→粗方構想が決まる、というプロセスが約3分ほどだった。レミリアが人間同士セックスの機会を作って人口を増やそうとしている、という件は以前から考えていたまた別の作品ので使おうと思っていた設定だった。あんな閉鎖された社会で人間の人口を一定数で維持していくのは簡単ではないはずで、加えて妖怪はかつて人間を襲いすぎてその数を危険なレベルで減らしてしまったという過去がある以上その辺には非常に慎重になっているはずだと思っている。だからその辺のディストピアSFばりに人間の性をコントロールしているのではないかな、というのを作品で描きたかったんだけど、大掛かりになりそうだったし、このへんでサラッと使ってしまおうと思った。

 ちなみに以前登場させたしいたけという名前の妖精メイドをほんの思いつきで出してしまったところ、私の中でレミリア付きの侍女という設定が固まってしまった。上に書いた妖精メイドを主役に据えた作品の構想というのがまさしく彼女のことだ。そのうち書くだろう。需要は知らない。

 ついでにちなみに私はゆかレミに並々ならぬ思い入れがある。

 

 

 

 

妖怪道中一六奇譚~飯屋に打ち上がるフライの怪~

 

 タイトルでやらかした作品。

 改題前は妖怪道中膝栗毛というタイトルだったのだが、同名の児童文学作品が存在することに気付き慌てて修正した。

 内容は今まで以上に誰得感の強いものになっていて、私の考える人里の設定の垂れ流しである。このときのアイデアが、後に同人誌用に書き下ろしたスクランブルエッグに引き継がれている。

 筋立ては休日によく放送されているなんとか散歩的なぶらり旅系の番組のようなものだ。マミゾウが人里をぶらついて、飯食って帰るというそれだけの話を引き延ばしたもの。今までやってこなかった恋愛ものを書いた後に、いろんなジャンルをどこまで書けるか挑戦してみたいという気分になって、これはグルメモノとして書いたもの。

 創想話には食事を扱った名作がたくさんある。私が初めて創想話で読んだ作品も、紅魔館で七輪を使って秋刀魚を焼いて食うという作品だった。

 ずっと前から、自分の考えた設定を効率よく提示できる作品形態を考えていて、東方キャラの休日をだらっと描くシリーズものというのを構想していた。この作品のタイトルもシリーズ化を念頭にしていて、サブタイトルを変えればいくらでも続けられるようにしている。

 

 

 

 

うぉんちゅー、ぷでぃんぐ!

 

 一発ネタ。

 完全な一発ネタ。

 一発ネタの名作というのは創想話に非常に多くて、自分にも書けるか試してみたのがこの作品である。あんまりうまくいったとは思わない。実はちょっとホラーの練習も兼ねていたので出だしが無駄に緊張感があるというか、ちょっとシリアス寄りだ。その辺が要らなかったのではないか。

 容量を見ればそんなに大したテーマを扱ってはいないと見抜かれていたと思うけれど、あえてタグを付けなかったりしたので、かつてないシリアス作品とか期待していた読者がいたら申し訳ない。図書屋はビールが大好きなのだ。神主ほどではないが。

 

 

 

 

 

いつだったか、帰り道があった。

 

 投稿時間を見ていただきたい。例大祭当日早朝である。

 私は例大祭に一般参加するために東京に飛んでいき、ネットカフェで一泊した。ところがゆっくり休む筈が、書店で購入した「安達としまむら4」を読んでしまったがために、またぞろ恋愛小説が書きたくてたまらなくなってしまったのである。ちなみに安達としまむらは名作なので是非読んで欲しい。現在5巻まで出ていて、レイニ―止め状態だ。いいぞ。

 そんなわけでこの作品は前々から書こうと思っていた要素は微塵もなく、本当に突然に、深夜のネットカフェで一から書きあげられた。八橋と阿求の恋愛ものなんて、深夜のテンションでなければどうして書けるだろう。正気ではない。

 タイトルを見てピンと来た人はいないと思うけどいたら握手。ビートルズのゴールデンスランバーという曲の出だしの歌詞だ。

 実はもっとストレートに黄金の微睡み、というタイトルのSSを構想していて、それは阿求とパチュリーの恋愛ものであった。阿求も罪な女である。パチュリーは名前からしてインド生まれのイギリス人ではないかという設定が前々から自分の中にあって、たぶん貿易会社の上流階級の娘で、そこで東洋魔術に触れたというストーリーで、きっとシタールが弾けると思う。インドというのはこれまたラーガロックの絡みでビートルズと関係の深い場所である。それがどうした。

 これを書いた時には想像もしていなかったのだけれど、これに書き下ろしの前後日譚を加えて「Get Back'99」という同人誌を後に書くことになった。

 

 

 

 

 

 

不良少女二輪にて

 

 爆発的な流行を期待していたのに意外と増えなかったひじみこころ作品をやむなく自分で書いた。

 これはたまたま早く帰宅できた日に、確かサッカーの日本代表の試合があっていて、TLの知り合いがけっこうその話題で盛り上がっていたので、これから試合終了までにSSを一つ書くから誰かお題をくれという即興企画をやった。私はとにかく締め切りを作ったりしないと自発的にはなかなかSSに取り組まないので、折に触れてこういうことをしている。

 「雨の終わりの速度」などで注目されている青段氏というSS書きに「バイクと聖」というお題を貰って、このSSを思いついた。試合終了にはちょっと間にあわなかったけれど。ちなみに青段氏とは前述の例大祭で会ってしばらく一緒に会場を見て回った。多才な青年だ。

 お題を他人から募集なんかすると、どんなとんでもないものが来るか分からないから相当にドキドキだ。青段君がマトモで助かった。 これは完全に余談だけれど、最近の東方界隈、特に秘封勢を自称する人々に多い気がする(相当に偏見交じりだ) が、なんだろう、より特殊なシチュエーション、あるいはもっと直截的に性癖を前面に出すことが愛が深いかのようにどこか考えているところがあるように思うのは気のせいではないと思う。

 最近の東方の合同誌の類は狂気を感じるカオスぶりで、それはそれでなかなか面白いのだけれど、異端を受け入れることと異端を尊ぶことは違う。様々な異端を許容することがジャンルとしての優れた点だという認識が次第に、より異端なものを受け入れるジャンルが優れているという考えにすり替わっているように思えてならない。より異常な愛し方をしたものの格が上だと思っている人間がいたとしたら、止めはしないが一度冷静なることを勧める。賢しら顔でこんなことを書き散らす人間も相当に胡散臭いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

スクランブルエッグ

 

 初の同人誌「短編集たまご」書き下ろし作品。

 実質的にコレのエピローグである「いささかヒヨコめいた手紙」についてもここに記すことにする。

 これもやっぱり何考えて書いたんだと今思うと分からないのだけど、当時の構想メモを見る限り、赤蛮奇が主役の探偵ものをやりたいということは当初から一貫していたようである。いや、何を他人事みたいに言ってるんだってここまで読んだ人の中にはいい加減思っている方もいるかもしれないけど、本当に覚えていないのである。文字書きは結構自分の過去作のことは覚えていないのだ。本当に。私が文字書きを代表するのもおこがましい話だけど。

 赤蛮奇を主役にしようと思ったのは、里に住んでいるであろうと思えるキャラだったからである。とにかく、多少なりともミステリの体を為そうとするならば(私はこれをエセミステリとして書いたが)、舞台は人里でなければ困る。誰がって私がだ。妖怪の社会がどんなのか分からないし、そうとなったら一から設定しないといけないし、それを説明もしなくてはいけないのだ。まあ、私の人里の設定も大概独自設定の塊だし、あまり意味は無いかもしれない。

 早苗さんが出てきたのは、これも何でか分からないが、彼女を登場させたことで俄然執筆スピードが上がったことは間違いない。勝手にキャラが動くとかそういうことを創作者はよく言うけれど、そういうことはままあることで、これはしかし良いことばかりではない。そういう場合、往々にして当初の予定と変わってしまうからだ。路線変更を余儀なくされるのはそれはそれでツライ。けれど今回に限っては、無駄にシリアスに寄せそうになる自分にとって彼女のお気楽な感じは良いバランスになったように思う。

 私の同人誌書き下ろし作品はこの次の本になるGet Back'99もそうなのだけれど、杉井光先生の影響が露骨に、極めて強い。杉井光先生というのはライトノベル作家で、代表作を上げるならば「神様のメモ帳」や「さよならピアノソナタ」などが有名だろう。2ちゃんの個人情報流出事件のときに、2ちゃんに同業者の中傷書き込みを行っていたのがばれて軽く炎上したあの先生である。ちなみに例の事件の時、私は何となく「先生はそういうことしそうだよな」と納得していた。鬱屈とした中高生の嫉妬めいた無力感や傲慢さ、時としてそれを発露してせせら笑うようなところを描くのが上手い人で、本人にそういう特質があってもおかしくは無い・・・というのは穿ちすぎだと思うけれど。

 話を戻そう。

 東方で「神様のメモ帳」をやってみたいというのがスクランブルエッグの出発点である。事件の真相周りも神メモ3巻を下敷きにした発想だ。全然違うものになっちゃったけれど。

 私はエンターテイメントが書きたいのであって、高尚な文学作品なんてものを目指しはしない。そういうところで、私が目指すものは多かれ少なかれ杉井先生に近いところになってしまうのだと思う。たぶん好き嫌いの分かれる作家かもしれないけれど。スターシステムといっても、ワンパだと言われたらそうだし。出来過ぎなところもあるし、でも私が読んでいて、ラストに向かって凄くテンションが挙げられる作品というのは、やっぱり彼の書く作品なのである。玄人好みの作家が好きだからって別に偉いわけじゃないし、というのはちょっと私の僻みも入っている。

 いささかヒヨコめいた~、は当初存在しなかった話である。同人誌掲載を前にばかのひ氏に査読をお願いしていたのだけれど、終わり方があっさりしているのではないか、という私の危惧に概ね同意いただいたことがきっかけである。ただ、私は一度書き切ってしまった作品に手を入れるのが本当に苦手で、これって作品をよりよくブラッシュアップしていくためには致命的な苦手だと思うんだけど、つまり、エンディングを書き直したり付け足したりするのが難しかったのである。

 そういうわけで後日談として、かつ、間に別の作品を挟むことで、なんとか一つの掌編という体で書き足しをしたのである。一応本全体の締めという役目も持たせられたので、割と上手くいったように思う。人間の愚かさを、それでも愛おしいと思う、というのがこの本だけに限らず、割と一貫した私の書き方だと思うんだけれど、それは自分自身が凄く愚かだから、ナルシストの私としては必然、人間の愚かさ全般を愛さざるを得ないからだ。自分大好きだ。むしろ、嫌いな人いるの?

 

 

 

 

Get Back'99

 

 同人誌2冊目。

 細かく分けるとめんどくさいので、収録作「Country road」「いつだったか、帰り道があった(前掲)」「ハイドランジア・モーニング」「Get Back’99」「Can't Reload」について纏めて語ることにする。

 そもそも、この同人誌はやはり前掲のティーポット、ラングドシャにそれぞれ後日譚を加えたものを詰め合わせて、恋愛もの3作品の作品集になるはずだった。しかしそうはならなかった。理由は言うまい(分かるだろう)。仕事が忙しかったのだ。言うのかよ。

 この作品は、そもそも一冊目がシリアス寄りだったことから、2冊目は恋愛物中心にしようということで始まった。当然に書き下ろし新作を収録しなけらばならないということで、選択したのが前から書きたかった阿求を主役に据えた音楽ものである。阿求が仲間を集めてビートルズのコピーバンドを作る、という漠然としたプロットだけがずっと以前から決まっていた。

 そうしたとき、既にいつだったか~で阿求を出していたために、その続きものとしてストーリーを構成することは自然に決まった。私は特に決めているわけではないのだけど、基本的に自分で書いた東方の二次創作は全て同一の世界線の物語だというつもりでいる。もちろんパラレルを書くこともあるのだけれど、その都度新しい世界を想像するのは面倒くさい。別に続きものではないから、読者には気を使ってもらう必要もない。

 閑話休題。

 当然ながらプロットを立てた頃には輝針城は出ていないし、八橋も影も形もなかったので、その先は全て一から考えることになった。元は単に阿求が暇に飽かしてバンドを作るはずだったのか、何をどう間違えたのか里全体を巻き込んだ音楽規制に政治家と全面対決したり、阿求サンはやることが派手でいけません。

 しかしやつあきゅのはずのこの作品だが、最初と最後の掌編ではあやあやだったりあきゅあやっぽい雰囲気も出していて、何処に狙いがあるのかいまいちわかりにくい状態。転生してもまた同じ相手と巡り合って、それが美しい運命なのかもしれないけれど、私はもっとドライに、新たな出会い、新たな愛があっていいと思っていて、御阿礼の子はそれぞれ別人であって、だけど何処かに名残りがあるのだ。などと供述しており、わけわからん。

 これもまた露骨に杉井光センセの作品が念頭にあって、こちらはさよならピアノソナタ、あと東池袋ストレイキャッツ等を意識している。サークル名を本来の意図で使うこともできたし、装丁の不親切さや組版の不備等は申し訳なく目を瞑って、やりたい放題やった本、という感じだ。

 

 

 

 

アンブレラ・アンダーテイク!

 

 小傘可愛すぎか。

 「短編集たまご」に収録予定だった・・・のだけれど、これもやむにやまれぬ事情、まあ仕事なんだけど、そういう色々あれで収録から漏れてしまったのだ。想定していた公開時期が半年ずれてしまったために、鍛冶師小傘のインパクトが続いているうちに出すという目論見は崩れてしまった。しかし、この半年間、小傘の鍛冶師設定を扱った二次創作があまり増えなかったことは残念である。

 また収録予定だった当初の内容から大幅に変更を加えて投稿している。変更前の方が紅魔館の過去設定がぶっちぎりで重かったのだけれど、その内容で十分に書きこもうとするとあと100kbは必要そうであったのである。ただ、別にその設定を無くしてしまったわけではなく、それらの問題はこの作品の時間軸よりも前に解決していることにした。それを何時か何らかの形で作品にするかどうかはまだ決めていない。

 元々そそわ投稿予定がなかったため、私のこれまでの投稿作品の中では最長の作品となってしまった。やはり長いと読んでもらいにくくなると思うのだけど、ゆーても長くすればそれだけ内容は充実させることができる。

 小傘は本当に主人公力も高いし、ヒロイン力も高い面白い立ち位置のキャラクターだと思う。あんなに無害な妖怪もいないし、ヒトの役に立ちたいなんて公式で言ってるの本当に小傘ぐらいではないか。すごい。

 実はこの作品の肝は雨天楼のビジュアルを視覚的に想像してもらえるかという部分にかかっているところが多い気がしている。雰囲気いを感じてもらえないと会話が上滑りしそうだし。今までの作品に比べると舞台作りに気を使ったはずだ。

 紅魔館の過去設定については、主な部分は出せたのではないかと思う。あとは美鈴とパチュリーだ。こちらも詳細に設定はしているので、いずれ作品としてお見せできると思う。いずれな。メイド妖精についてはまたぞろいっぱい登場させてしまった。上に書いていた妖精メイドメインの作品というのが実質これのことである。しいたけの過去話はいつかどこかにおまけとして出してみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曇り屋上のとおりゃんせ

 

 ツイッターでお題募集第二弾。

 去年はバレンタインSSあげたのに今年は無いのかと自分で思って前日土曜日の夜に登場キャラをツイッターで募集したところ、またもや一番に青段君から「菫子」というオーダーがあった。私は秘封倶楽部にあまり詳しくないし、秘封界隈に漂う空気も苦手なので菫子を書くことは無いだろうと思っていたのだけれど、募集した以上は書かなければと思って、あくまで自分でプレイした深秘録のイメージだけで書くことにした。

 当初はカップリングをどうするか迷って、もこすみは好きだけど自分で書くのはなんか違うし。そんななか青段君が「パンダはどうか」という正気を疑う提案があった。私はそういうのが大好きなので、パンダを中心に展開することを決定し、あとは自然に物語ができた。

 以前ツイッタで垂れ流したことがある兄ネタだけれど、何となく菫子から直接蓮子には繋がっていない気がして、兄弟姉妹の影を感じてしまうのだ。そうすると菫子は長男長女の性格ではないし、兄か姉、どちらかというと交流の少ない兄の存在を何となく想像してしまう。

 秘封倶楽部が今後どうなっていくのかということについては想像の余地があるし、私の大好きなキャラクターである紫に関係がありそうなので、妄想に避けては通れないキャラだと思うのだけれど、今回はとりあえず順当な女子高生として描くことができたのではないかと思う。

 これは完全な余談だが、レミリアはあの後紫に、菫子ってのとあったよーん的なことを言って紫の反応を観察して楽しんでいると思う。というか楽しんでる。

春に散った銀杏に

 自身3冊目の同人誌「黄金音虫の挨拶とティーポットの中の混沌と」に収録した描き下ろし掌編。熊本地震によって石垣が崩れ、鯱が落ち、大きく傷付いた熊本城に捧げた幻想入り作品。

 本サイトの雨曝しにおいてあるエッセイ「火之国鳴動ス」を読んでいただければ、詳しく説明せずとも十分だと思う。

 主人公嫌い――主人公である霊夢や魔理沙が嫌いというわけではなく、主人公という属性が好きじゃない――である私には珍しく霊夢一人称がメインの作品。でも主役は熊本城である。擬人化する案もあったが私の思いが入り過ぎると思い、アバターとして星くんに登場願った。

 星が出る→ナズも出す→正邪もだそ? というわけでまさかの表題作のその先を書いてしまった。魔が差したのもあるけど、別の理由もある。普段は自分勝手に書きたいものを書くとは言いながら、一応読者に楽しんでもらおうとも思っている私だが、この作品だけは本当に自分の心を落ち着けるため、熊本城損壊の悲しみを乗り越えるためだけに書いたものだから、少しでもお楽しみ要素を足そうと思ったのである。

 読み返しても特別面白くないし、相変わらず戦闘描写は苦手だが、他の作品にはない、生々しい私の思いが文章に乗っかっていて、特別いびつな作品だと思う。

パートタイムラビット

 雨曝しのエッセイ「火之国鳴動ス」をコピー本として配布する際に、製本の都合上ページに余りが生じたため、文字数を埋めようという貧乏性もとい経済合理性から生まれた掌編。

 鈴胡は登場時から好きで、紺珠伝では一番である。「シードルの揺れる泡を見ていた」あるいは「シードルバブルゲイザー」という仮タイトルだけ決めている鈴胡を主役にした作品の練習のつもりで書いてみた習作でもある。

 外部性があって頭がよく、野心がないという彼女のキャラクターは、幻想郷の世界観を書きたいという私には理想的な配役であり、また本作を書く中での書きやすさも確認済みで、何れ書きたいものが決まった時には語り部として頑張ってもらう予定だ。そそわ作家の大根屋氏の感想にて「この作品の鈴胡は明らかに作者のキャラクターが反映されている」という言葉があったが、なるほど彼女の一人称を考える上で、基本的なものの考え方や、ものの言い方、普段のものぐさな感じは、言われてみれば私そのものである。

曇り時々アメでしょう

 ギャグ作品。

 いつものごとくお題を募集した即興作品である。即興作品は短時間で確実に一本出来上がるし、頭の体操になるので、余裕があるときには積極的にチャレンジしていきたい。三題話もやってみたいがちょっぴりハードルが高い。楽しく書くためにも自由度を確保したい。

 お題は「雨の日」「変な雨・七色の雨」「虫取り」である。ダジャレか? ダジャレだ。書き出し時点ではオチのことは全く考えていない。不思議系日常ものでいくか、シュールギャグでいくか、シリアスにもっていくか、書き進めながら考えているのだが、やはり早苗が出てきた瞬間ギャグ路線が確定した。

 普段幻想郷の重めの世界観をメインにしているので、どうしても早苗は一服の清涼剤みたいな認識になってしまっている節がある。

 順序としては七色ならアリス→ファフロッキーズで早苗→緋想の剣で天子→トラブルの元といえば魔理沙→その入手経路としてのパチェ、である。手を動かしながら連想ゲームをしているだけだ。

 最後の部分は、コメントの指摘もあるが、私自身も投稿直後に、カメとサメを逆にした方がインパクトの面で格段に良かったと気付き、地団駄を踏んで悔しがった。

博麗霊夢になれなかった君へ、あるいはエスプレッソの飲み方

 タイトルが長い。

 後述するばかのひ氏への寄稿作品として作っていたものをセルフ没にして、そそわ用にリライトしたもの。

 当初、この作品の主役は冴月麟ではなく、オリジナルのキャラクターだった。博麗の襲名制に関する場面もなかった。つまり、公式キャラはルーミアしか出ない超独りよがりな作品だったのである。しかも一度はばかのひ氏に渡している。他人様の同人誌への寄稿としては些か奇行過ぎる。

 いや、実際に寄稿した方も相当アレだが。

 爪痕云々ではないが、折角よそにお邪魔して、しかも少ないページ数でのことだから思い切りエッジを利かせたくて、世界観だけで勝負をかけようとしたのだ。何ならルーミアも別のオリジナル妖怪に差し替えようかという勢いだった。

 しかし主役が最後に勝ってしまうストーリーなので、完全なオリキャラだとメアリー・スーになりかねないと思い、ばかのひ氏に自ら撤回を申し出た。

 とはいえ捨ててしまうのは忍びなかったのだ。要は、主人公勢が片手で捻るルーミアにさえ苦戦するような木端の退治屋があちこちで頑張っているという世界観を描きたかったので、実質オリジナルながら最低限東方であるように、記号として冴月の名を借りた。せっかく冴月にするんだから、その名が歴史に残らなかった経緯をちょっと翻案して落とし込み、タイトルをお洒落にしたいというだけの理由でエスプレッソという言葉を作中に登場させた。「○○あるいは××」というタイトルは一度やってみたかった。

 本当にただの廃材アートというかリサイクルとしてやっつけで作ったのに想像以上に反応が良くて驚いている。必ずしも作者がこだわって気合を入れた作品が読者にとっても面白いとは限らず、逆もまた然りということだろう。

薄荷仇討琴調

 寄稿作品。

 合同等に参加していない私にとって初の余所様の同人誌に載った作品。読み返すだに、よくこんなものを余所様の同人誌に載せたものだと作家の神経を疑いたくなる。とはいえ、ばかのひ氏の前作にあたる短編集を呼んだ時に結構尖った作品があったこと等を勘案してのチョイスではあるのだ一応。それに、他でもない私に寄稿を依頼する時点で、彼も十分に危険性を分かっていたと思うし、しょうがないよね。

 今は未だばかのひ氏の短編集を買っていただくしか読む方法はないが、冬コミが明けたらどこかに再掲するつもりである。

 いい加減中身の話をすると、オリキャラがオリキャラに殺されるという気が狂った作品だ。注目すべき点として、拙作では初めて布都を登場させている。黄昏作品では持ちキャラということもあり、とても好きなキャラなのだが、あのすっとぼけた雰囲気と、ギャップの大きすぎる過去設定にどう整合性を付ければいいか分からず、これまでは触らないようにしていた。書いてみると、人懐っこく、抜けているが、実力はあって気も使えるという小さな体に反して大型犬のようなキャラ付けになった。過去設定については、具体的には考えていないが、何らかの形で区切りをつけているものと考えることにした。復活という奇跡の体現によって文字通り生まれ変わった、過去のしがらみから抜け出しているのである。書いていて楽しいので今後も登場させたい。頭が切れるが抜けている、というより、抜けているが頭が切れるという描写に拘りたい。

 他に、拙作では珍しく早苗がシリアス要員である。咲夜は明らかに人外の側に立った人間だが、早苗もまた妖怪の山から進行を受けているという意味では間違いなく人外のサイドに立っていると思う。しかも咲夜がいつからそうなのか分からないのに対し、早苗は普通に価値観や人格が形成されるまで外の常識で過ごしているのが分かっている。きっといろいろと折り合いをつけいかないといけない問題が山積みだ。そうしてみると、私もこれを書いていて今気づいたのだけれど、今作の主人公は早苗である。

 

ヘアーカラーとアンフェタミン

 創想話投稿20本目の記念すべき作品。

 毎年、クリスマス前後には即興や掌編ではない、気合を入れた作品を投稿するのが自分の中で恒例になりつつあるため、それに向けて書いた話。構想、プロットには1カ月以上かけたが、その間決まったのは美鈴とルナサが同居すること、ルナサが向精神薬を服用していること、以前考えた紅魔館過去編の美鈴パートを物語と絡めること、これだけだ。それ以外の要素は全て書きながら決まったもの。執筆自体は2日間で完了した。

 今回改めてわかったことは、少なくとも私の場合は、何百時間頭で捻っても作品は面白くならないし、逆にどんなに無理そうな設定でも、結末が見えなくても、書き始めれば書き終わるということである。まさか100kb越えるとは思わなかったが。

 美鈴の過去についてだけは、ガキ大将執筆時の誇大妄想である紅魔館過去編としてかなりしっかり決まっていた。紅魔館過去編についてはアンブレラ・アンダーテイクで描いたフランパートと今回描いた美鈴パートが大半を占め、残るはレミリアとパチュリーのパートを残すのみだ。二人のパートは密接に関わっているので一本の作品になると思う。アンブレラの初稿から完成までにカットされたレミリアとフランの確執は、それにまとめるか個別に一本にするかまだ決まっていない。ちなみに咲夜パートの構想は過去編に含まれていない。

 紅魔館過去編は文字に起こして保管しているわけでもないのだが、自分の中で全くぶれずにこの5年近く存在している。そのため、例えばオメラスの原罪の時点でレミリアと美鈴が東塔4階で会食するシーンが既にあるし、デザートにラングドシャでもフランとの会食が同じく触れられている。それぞれの時点で、いつ書くか、そもそも書くかどうかも分からない今作のために伏線を張っていたのだ。バカか。

 しかし美鈴パートをめールナという謎カップリングで消化することまでは全く考えていなかった。一応ラングドシャの時点でプリズムリバーがちょくちょく紅魔館で演奏をしている描写はしていたが、さすがにこれは伏線のつもりではなかった。ただ、不必要な描写に筆を割きまくるタイプなので、結果的にいろんなところがシナリオフックになるのである。

 また、妖精メイドうろうろは、今作で登場したせいでキャラが固まってしまった。妖精メイド出し過ぎ問題。

 プリズムリバーにはさほど思い入れがなかったはずが、ゲットバックではリリカがサブで登場し、ルナサも顔を出している。ルナサは今作で主役を張り、メルランには命蓮寺に出入りしているという設定が生えた。だいたいそうだが、登場させたキャラには愛着が湧くものだ。

 ぐだぐだとまだ書くが、本作を書いている間、ティーポットとの類似点が多く、いかに差別化するかという点には悩まされた。そもそも私は同居ものの百合描写が好きなのだ。ナズ正も然り、八あきゅも共同生活させた、今作もだ。ティーポットがOLとニートないし学生の同居百合だとすれば、今作は社会人同士のルームシェア百合のつもりで書いた。美鈴もルナサも成熟した分別のあるキャラクターとして描写しているし、うまくやっているようで打ち解けるまでには時間がかかっている。そういうところを大事にしたつもりだ。

 根柢の大テーマはいつもと同じで、弱さ、愚かさを許し、愛するということを描いたつもりだ。いつでも愛と諦念と許しを書いているつもりだが、今作はそれが特に分かりやすく出てきたと思う。

 私の学生時代の友人は引きこもって鬱病になりかけたし、ツイッターの知り合いには皆いろんな事情で薬と付き合いながら生きている人が多い(ストラテラとかコンサータとか名前を覚えてしまった)。私の姉は摂食障害で随分と苦しんだことがある(今では仕事中の弟に自分のコスプレ写真送りつけてくるくらい元気だが)。みんないろんな苦しみを抱えているし、社会が病んでいるなんて言われることも多いけど、そういうものと穏やかに、うまくやっていく道を探さないといけないと思っている。

タイム/スライス/マシン

 黄金音虫としては初のデレマス二次創作。ここに至るまでには相当の葛藤があったことを覚えている。というのも、自分が書くようになったジャンルでは、どうしても他の作者の二次創作を純粋に、本当に心から楽しむことが難しくなるからである。どうあっても面白い人の作品は面白いのだけど、自分より劣ると思える作品が評価されているのが我慢ならなくなる瞬間というのがある。そんなものは、ある面では個人の好みであるし、また自分が交流を広げて評価の母数を増やしたり、上手く宣伝していくような努力を怠っておきながら、不満を持つということにも意味が無いのだけれど。しかしそこは感情だから如何ともしがたいところがある。ともかく私は長らく東方界隈に居て、少なくとも小説については昔ほど心から楽しむことが難しくなった経緯があって、だからデレマスは純粋に楽しむだけにしておくつもりであったのだ。

 しかし、Azuriteの柊先生の作品を読むにつけ、自分でも書きたい欲がむくむくと湧き上がっていたことも事実である。これはもう性分だから仕方がない。上にグダグダ書いたような事もあるにせよ、それでもやっぱり、創作には他に代えられない楽しみがある。何かネタが浮かぶなら、という状況にあったのだ。

 ところで思いついたのは、NHKで深夜に放送されていたアート番組であった。ピクシブの前書きにもリンクを張った通りの、タイムラプス撮影で作られた映像の美しさに魅せられ、どうしてもこれをネタに一本書きたいという心持ちになった。それをきょうさきでやるとなったのは、一つはアート関係であるから沙紀なら話が展開しやすいと思ったのと、もう一つには、柊先生がきょうさきを推していたからである。

 書くと好きになる、というのは物書きの誰もが経験することだと思うが、私もどちらかと言えば好きなキャラで創作をするというより、創作のためにキャラを呼んできて、書くうちに好きになるタイプであるから、きょうさき二人は後に出すデレパスにも出演させた。

 この作品自体は、私にしては比較的ストレートに恋愛色を表に出したような気がする。私はいつも百合と言いながらあんまり甘々なものは書かないので、これはシチュエーションからくるものか、あるいは筆が乗っていたかのどちらかだ。きょうさきの解釈自体は先人たちが切り開いてきたところからさほど離れていない、あまり独自路線の強くないものに仕上がったような気がする。

 

世界の終わりとラジオハッピー

 完全に単発のつもりで書きなぐった怪文書である。RadioHappyは私がシンデレラ楽曲で一番好きな曲である。終末のアイドルというちょっと面白いハッシュタグがついったで流行っていた時、世界が終る時はラジオからRadioHappyが流れていてほしいというツイートを見て私もそうだなあと思ってこれを書いた。あの曲は凄く朝焼け感があって、無性に泣ける瞬間がある。パッションというのを元気がいいことだと解釈するのは、概ね間違っていないながらも不足であって、ああいう非常に情動的なところも含めてパッションなのである。

 

ゆきさちバックホーム

 明確に今後もデレ百合作品を書いていくことを決めてから最初の作品。上記作品は単発の可能性も有ったが、これによって一つのシンデレラアソートシリーズということになった。この作品以降、一部の例外を除いてシリーズタイトルが「(カプ名)+六音のカタカナ語」で統一された。

 ゆきさち、さちゆきは極端に作品数の少ないカップリングで、これを書いている時点でも小説ではこの一作品しか存在しない。私が嵌ったのは某絵師が書いていたからで、いやはやアニメのKBYD描写からああいう関係性を削り出せる嗅覚には感心する。幸子はさちまゆとか他の組み合わせだと割とかっこいい路線が多い気がするのだけど、ユッキとセットにすると年相応のカワイらしさが出てきて楽しい。いい加減みなさんご存知の通り私は所謂固定の方とは真逆の嗜好をしているので、こういう作品を書きながらもさちまゆやとりかわを楽しく創作できる人間である。

 こういう覇道カプは評価が分かれる所と思うが、じわじわ読んでくださる方が増えているようで嬉しい。接点のほとんどないキャラ間でも、設定解釈と組み立てを丁寧にすれば必ず一定の理解を得られる、というのは東方での活動で確信している事であるので、私は今後もこういうニッチな所を突いていくつもりである。

 

しきあすナイトウォーク

 私としきあすとの出会い、ファーストインプレッションの全てを詰めた作品。私のデレ百合作品では最多登場のカップリングであり、東方も含めても、一つのカップリングについて書いた作品数では最多である。一応渋のしきあすSSでは一番ブクマをいただいているけれど、特に反響が寄せられることもなく、どのように受け止められているのかはちょっと分からない。私のしきあす解釈は全部この一作に詰まっていて、これ以降の作品はバリエーションというか、あくまで続編というよりファンディスク的な立ち位置の感覚がある。あの二人はやたらいちゃいちゃしているよりは、多くを語らず二人で放浪していてほしい。

 

志希お姉さまと飛鳥さん

 番外編中の番外編。デレマスアソートの一つとしてはいるけれど、異世界というか平行世界的な話なので、タイトルも命名規則に従っていない。しきあすもそうだけど、ラ・ロズレの家族観に焦点を充てたかった作品。志希は案外、年下と絡んでいる時の方が輝くのではないかという思いがある。それは近作のしきはる然りである。響子との関係もかなり好きだ。今書いていて気付いたのだけど、ラ・ロズレが好きなのは、家族に囲まれて幸せそうな志希を見るのが好きなのかもしれない。

 

しきあすキャノンボール

 立て続けにしきあす三作目。シンステに持って行くコピー誌の内容を公開したもの。志希の家族設定は本当はぼかしておきたいのだけど、昔からの性分で、設定上不明な部分に触れないように創作することで曖昧な感じになってしまうくらいなら、割り切って勝手に創作して切り込んでいく方が好みなのだ。それが二次創作の醍醐味でもあると思っている。ただ、そこには何かしらの原作からの合理的推論があってしかるべきとも思っていて、私なりに感じ取れた志希の家族観を形にしたものがこの作品である。国際線のエコノミーで寄り添って丸くなる二人が見たかっただけなのだ。

 

しおみゆグリューワイン

 

 シンステ以降に書いた作品。デレパスの中で当初絡ませるつもりの全くなかった二人が、いつの間にか裏主人公&ヒロインみたいになっていた件を受けて着想に至ったもの。デレパスの通販完売やご好評を受けて何か作品でお返しできないかとの考えから書いたのだけど、雰囲気全然違うし、何というか、邪悪な感じになった。でもこういうのも私は大好きである。悪い一面を持ったキャラが好きなのだろう。

 周子のヒモ・セフレ概念は概ねもかぺ女史のツイートの影響だと思うけど、ヒモに引っかかりそうな三船さん概念と組み合わさって絶望的に悪い百合になった。正直、書いていてかなり楽しかった。近年のしゅがみゆ勃興を受けてしゅがはさんにちょっと格好良い登場をしてもらったが、作品全体としてしまった気がする。続編を望むコメントもいただいてありがたいところだが、丸く収まった周子にはもはや筆が乗らない気がするので続編の予定はない。

 

かなふみサインライト

 

 初のかなふみ作品。嫌いではないが既に素晴らしい作品が多く書かれている組み合わせもあってそれほど食指の動くあれではなかったのだけど、デレパスの読者層にかなふみクラスタが多い印象を受けたので、感謝を込めてこれも考察してみた結果。この二人は公式で既にめっちゃいちゃついているので、なかなか動かしがたいところがあったので舞台設定に展開を求めることで、なかなか面白い作品になったと思う。奏をあまり子どもっぽくし過ぎたくない、という思いがあり、あくまで女子高生の範疇に留めるバランス感に苦慮した。文香は、例えどれほど二人の仲が進展していたとしても本を読んでいる時にはそこに全力で向かってしまうと思うし、奏にもそれを愛してほしいと思って、このような感じになっている。

 

細い線

 

 何か作品を書きたく、また反応が欲しいというタイミングで企画が進行していたので、これ幸いと乗っかったやつ。特に見知った方はいなかったのだけど、色んな方に快く受け入れていただいて作品感想などもいただいた。

 こちらはうってかわって文香視点。アイドルであることと、奏との接点は彼女にとって不可分であって、文香はこの期に及んでアイドルであることを何か運命的な偶然によるものだったと思っているし、どこかでボタンを掛け違えば出会えていなかった。そういう彼女の想いが夢という形で現れたら、というコンセプトに始まり、足場が崩れるような現実感の喪失が描ければと思った。こわいゆめが現実だと気付いてしまうのが一番怖い。

 

しきあすリップサービス

 

 資格試験の勉強でテンションが下がっていたところに志希の誕生日というので何か書いてみたくなった作品。しきあすという視点を持つとき、如何にして飛鳥が志希にとっての特別たりうるかというのは意外と難しい問題であるし、たぶん飛鳥もそのことにきっと気付いていると思っている。しきあすとしきフレの関係性については実は志希お姉さまと飛鳥さんでちょっと描いているのだけど、こちらでは現実的世界観で少し触れた。飛鳥から見てフレデリカが志希にとっての極めて特別な場所にあることは絶対に分かっていると思うし、直接フレデリカとぶつかると勝てないと思ってしまっている。一方で、飛鳥のコミュを見る限りフレデリカは飛鳥をかわいがっている。この辺りの関係性の妙をどうにかこうにか作品に落とし込みたい。

 所謂固定厨でない人にも二種類がある。それは、別カプがオルタナティブに成立するタイプと、同一世界線に於いて成り立つタイプである。例えばかなふみとかなしゅうに於いては、かなふみ固定、かなしゅう固定、かなふみかなしゅうそれぞれはあり、かなふみかなしゅうが同時にあり、となる。ただ、同時成立に於いては、カップリング間の感情も必ずしも一様ではなく、例えばうづりんとりんののが同時に成立したとして、しんのの間の愛情とうづりん間の愛情は多分大きく違うカタチだろうと思う。突然何の話かというと、私は複数カップリング同時成立がぜんぜんありというか、他カプ前提カプを是としているので作品の方向性もそういう風になるという話である。

 とはいえ、うちでいう百合と恋愛には結構重ならない部分もあるので、言葉ほどには特別な事ではないと思う。ただ、関係性を閉じて欲しくないという思いがどこかにある。このようなしきあすを書いていても、この世界線の中で飛鳥は蘭子を大切に思っていると思う。

 

しきはるダンス/みれあすリドル

 

 上の句と下の句というか、連作短編的な仕上がりを目指した変則作。命名規則も、後半の六音を三音ずつ分割することでその辺を表した。しきはるめっちゃいいし、みれあすも面白い。世界観がこういう風に外向きに開いていることが楽しい。しきはるについてはU149を受けてのものだが、同作者である廾之先生にブクマ頂いたことは至上の喜びである。

 

ととのえるわたし、ぐちゃぐちゃにするあなた

 

 記念すべきマギレコSS一作目。ジャンルを横に拡張していくことについて躊躇はあったが、ここまで来ると、書きたいタイミングで書きたいものを書いていくことによるモチベーションの維持が優先されるように思われたところ。

 元々まどマギは好きなジャンルで、叛逆の物語は劇場で八回見た。しかしながら当時は東方以外で二次創作をしない方針であったので、あくまで楽しむだけのスタンスであった。

 この度長きにわたる延期を経てマギアレコードが動き出したことをもって自分の中で解禁ということにした。現状もっともスタンダードな所はいろやちであろうと思うが、王道を好む性質でもなし、最もこじらせた気配のあるももみたで一本書くことにした。カップリング物は最初の一本が出れば後続が続きやすい傾向があるので、ももみたに増えて欲しいという思いもあって上梓したのだけど、今の所SSはこの一作だけらしく悲しみを背負っている。 

 

迷っているお前、信じているアタシ

 マギレコ二作目。神浜キャラメリゼというシリーズタイトルは相変わらず語感と、あとは甘いだけじゃなくてちょっと苦みのある百合が書きたいということでつけた。こちらの命名規則は今のところ「〇〇する(一人称)、〇〇する(二人称)」の予定。

 梨花は偶然にも早い段階でガチャで引き当て、性能が気に入ってメインで育てていたところ、個別ストーリーでまどマギ始まって以来の公式同性愛者というインパクトにやられ、またそのストーリーがよく練られていた。その上、初のイベントで相手役が出てきて、しかもそのストーリーが刺さりまくるというこれ以上なく流行に乗った百合の波動を全身に浴びて爆発四散。どうにか作品を書かなければと思っていた。ネタとしては所謂セックスしないと出られない部屋、をきちんと設定上の理屈をつけて演出した形である。

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